収益還元法で利用される指標は、(1)期間収益、(2)利回り、(3)将来の物件予想売却額の三つである。(1)の期間収益、すなわち賃料は、むずかしいとはいえ、努力すれば不動産鑑定士は集めることができる。ところが、日本で(2)の不動産利回りを決定するのはまことに難問題だ。利回りを決定するためには、まず、他の金融投資商品と比較する方法があるだろう。また、過去からの時系列で見る方法、不動産投資利回りの国際比較などの方法もある。他の投資商品としては国債、社債、定期預金などがあるが、これら金融投資商品の利回りのベースになっているのは公定歩合だ。ところが、昭和六〇(一九八五)年のプラザ合意後、公定歩合は金融機関を救済する道具に成り果ててしまい、いまではゼロ金利近辺をうろついている。その結果、金融商品の金利も公定歩合に引きずられて下落し、不動産投資利回りとは無関係に近い関係になってしまった。そのため、不動産利回りはもはや、既発国債の何ポイント上とか、下といった目安で考えることができなくなってしまった。時系列で利回りを追っていくのも限外がある。ゼロ金利政策が続く中で、公定歩合に合理的な連続性はないし、バブル後の不動産価値の長期低迷から、過去の価格の軌跡から判断して、適当な不動産投資利回りを決めることができなくなっている。また、国際比較にも問題がある。たしかに不動産投資市場は、もはや国境を越えて世界中の有料物件へ投資するというグローバルな市場へと転換している。にもかかわらず、不動産鑑定士たちはニューヨークでは何%だから、東京はどれだけといった比較をしたことがない。当然、香港やパリとの比較もしたことはない。日本の不動産はあまりにも売買や賃貸上の制約が多すぎて、国際比較では、だれからもクレームのつかない投資利回りを決められない。では、彼らはどのようにして利回りを決定しているのか。率直に申しあげよう。極端にいえば、依頼者である外資系金融機関の担当者の顔色を見て、決めているだけである。
(SUUMO不動産情報)
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